音声信号処理

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ろう管レコード再生機の開発

エジソン式蓄音機によって録音されたろう管レコードの再生機を開発しました。これまでに、樺太で録音されたアイヌの叙事詩(ユーカラ)や、20世紀初頭に録音された日本人の音声など、民俗学的に価値の高いろう管レコードの再生を手がけました。また、古く損傷の激しいろう管も再生できるように、レーザー光による溝の読み取りや、デジタル補聴器で使われている方式を活用した雑音除去などを行いました。

GHA(一般調和解析)による歴史的録音のアーカイブ

19世紀末から20世紀前半にかけての歴史的録音の大半は原盤損傷のために良好な再生が困難です。この研究は従来のディジタル信号処理手法とは全く原理の異なる、N.WienerによるGHA(一般調和解析)の高い周波数分析能力を用いて損傷音源を修復するものであり、殊に雑音の除去に有効です。これまで主にアナログSPレコードの修復を行い、図に示す様に昭和初期に若くして亡くなった天才音楽家の演奏を修復、CD化して「レコード芸術」誌より特選を得ました。現在はGHAを利用して欠落した音の再現を試みており、より難度の高い1900年前後の蝋管レコードの修復を試みています。

デュアルMSマイクロフォンによる音楽録音

レコード制作や放送のための音楽録音の現場では多くのマイクロフォンを使用し、そのセットアップとミキシングには労力と長年の経験が必要です。この研究では演奏会場においてマイクロフォンが集音する音響信号間の相互相関関数(空間相関関数)ρに着目し、 MSマイクロフォンを用いればステージ上の楽器音に対してはρ=1、会場内の残響などの間接音に対してはρ=0となる様な設定方法を見出しました。その結果、設定の異なる2個のMSマイクロフォンを組み合わせる事により、多数のマイクロフォンを用いなくてもステージ上の音を明瞭に捉え、かつ、響きの豊かな音楽録音が可能になりました。